温泉地満足度

昨日の北海道新聞朝刊に「満足度、登別が道内一」の記事がありました。
これは、リクルートの観光情報誌「じゃらん」が全国で初めて行った「温泉地満足度調査」で、道内では登別温泉第1位になったとの記事です。



その記事が北海道じゃらん2月号(1/19発売380円)に載っているとのことなので早速買って来ました。

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■「北海道じゃらん2月号(2008)」



しかし道内では第1位登別温泉でも全国順位では第18位なのです。


記事によると道内にある登別以外の温泉地では

 23位旭岳温泉天人峡温泉
 24位十勝岳温泉白金温泉


 29位ニセコ温泉郷
  ※北海道じゃらんではニセコ温泉郷の定義をニセコ、倶知安、蘭越、真狩など羊蹄山を囲むニセコエリアに点在する温泉としています。


 32位ウトロ温泉

 34位阿寒湖温泉

 41位十勝川温泉

・・・と続き、


道内で比較的大規模な温泉地順位は

 62位湯の川温泉

 80位洞爺湖温泉

137位定山渓温泉

140位層雲峡温泉

という結果になっています。

(注)この調査結果は2007年9月7日~14日の期間に「じゃらんnet」を利用して宿やツアーを予約した人を対象に温泉地アンケートを実施し、全国323温泉地の中から「知っている温泉地」、「これまでに訪れた温泉地」、「これまでに訪れた温泉地の中でもう一度行ってみたい温泉地」、「最近一年間で訪れたことのある温泉地」、「最近一年間で訪れたことのある温泉地の満足度」、「今後行ってみたい憧れの温泉地」について、選択式で回答してもらい、全国6727人の方から有効回答を得たものです。
今回の温泉地満足度ランキングはその中から「最近一年間で訪れたことのある温泉地の満足度」に注目し、満足度を点数化しランキングしたものです。
以上、北海道じゃらん2月号(2008)から抜粋引用



ちなみに全国第1位は熊本県の黒川温泉です。


私はこの記事を見て正直頷いてしまいました。


過去記事でも書きましたが、北海道の温泉地の現状は私が危惧している不安がそのまま数字に出ている感じがします。


全国順位ベスト5のうち、4箇所九州にある温泉となっています。


第2位に入っている小田・田の原・満願寺温泉黒川温泉と同じ熊本県南小国町にある温泉です。
これは黒川温泉の人気と相乗効果による要素も多いかと思われます。




それでは何故黒川温泉がいつも上位に評価されるのでしょうか?


黒川温泉を語る上で、「山の宿 新明館」なくして語ることはできません。

以下、黒川温泉(wikipedia)より引用
新明館の後藤哲也氏は、当時まだ旅館経営の実権は握っていなかったが、人々に「癒し」と「くつろぎ」を求めたいというニーズ、自然の中で開放されたいという欲求があることを見抜き、それには露天風呂が最も適していると確信を持つ。一人露天風呂を作ろうと決意。旅館敷地内の山肌に向かい、洞窟風呂の製作に着手する。
もう一つは樹を植えたこと。作り込んだ日本庭園ではなく、野の山を再現しようとした。
やがてこれが評判になり、新明館は盛況となる。しかし、当時、他の旅館主の受け止め方は「あそこは立地がよいから・・・」という程度の認識であり、依然宴会客中心であった。
こうした盛況を見て、「いこい旅館」の婿養子が、後藤氏に教えを乞う。(婿養子ならではのフットワークのよさとカメラ店を経営していた経歴から、気軽に聞くことができたのが幸いしたといわれている)
1983年6月、「いこい旅館」に女性専用露天風呂を開設、「美人の湯」として女性に評判になる。以後、各旅館に露天風呂の開設が相次いだ。



確かに露天風呂の有無が温泉選択の重要な要素になっている事は間違いありません。


しかし露天風呂がある温泉地は、黒川温泉のこの話以前にいくらでもあったはずです。

人気の秘訣はこの露天風呂の有無だけではないようです。



もう一つは湯巡り手形にあります。


再び、黒川温泉(wikipedia)より引用します。
・湯めぐり手形というヒット
客を引き留め、リピーターを確保できる、黒川温泉のセールスポイントは何かを摸索した結果、候補として挙がったのが露天風呂と田舎情緒であった。また、単独の旅館が栄えても温泉街の発展にはつながらないと考え、温泉街一体での再興策も練られるようになった。その他、様々な案が浮かび上がっては消え、試行錯誤の連続であったが、1983年から入湯手形による各旅館の露天風呂巡りが実施される。もっとも、この企画も大々的なPRを行わず、後は口コミによる観光客増加を待つのみであった。また、この頃は修学旅行生も頻繁に受け容れており、手頃さも売りにしていた。そういった地道な活動の結果、今に見る隆盛に漕ぎ着けたのである。
総ての旅館の協力のもと、「入湯手形」により、日帰客も含めて、何処の露天風呂も入れるという仕組みは、画期的であった。この企画が大ヒット、話題となって、黒川温泉が人気温泉地として飛躍するきっかけとなった。今や黒川温泉といえば、「入湯手形」だが、その誕生のきっかけは次のとおりである。
1985年(昭和60年)7月、組合で野沢温泉を視察、外湯めぐりにヒントを得る。
一軒のみどうしても露天風呂が作れない旅館があり、「共生」を理念とした湯めぐりの発想が沸く。
1986年(昭和61年)「入湯手形」をスタート。ただ、旅館組合でも確たる見通しがあって始めたわけではない。実際、開始当初は「手形」が捌けず、各旅館に割り当てて引き取ってもらうことすら考えた。
同年秋頃から全国的に秘湯ブームとなり、次第に軌道に乗った。
1986年12月の熊本日日新聞の広告企画で、熊本県内でブームになった。この時に、それまでそれぞれの露天風呂に「○○の湯」という愛称をつけることにした。
1987年(昭和62年)2月、個々の旅館の広告看板を撤去、マスコミを招き報道してもらう。
以後、福岡地区等でキャンペーンを図る。
旅館組合にも「入湯手形」の販売により、一定の収入が入る仕組みになっており、組合の財政を潤し、それがさらなる環境整備、キャンペーン費用に充当できるなど、好循環を形成している。

・ブレイクは情報誌
1998年に福岡の情報誌旅行情報誌「じゃらん九州発」の人気観光地調査でトップに立った。それまで知る人ぞ知るという存在であったが、一気に人気温泉地として全国的に注目を集める存在となった。
今日における黒川温泉の爆発的ヒットの一大要因としてインターネットが挙げられる。というのも、テレビや雑誌などで頻繁に採り上げられる数年前には、もう一部の温泉ファンの間で「熊本の黒川温泉が一押し」と叫ばれて、掲示板のアンケートでは常に上位を占め、知る人には知る名湯となっていたからである。

・癒しの温泉郷として
黒川温泉のまちづくりのスタンスは明確である。都会の生活に疲れ、温泉に「癒し」を求めて来る観光客にくつろぎを与え、リフレッシュしてもらうためにできる限りの演出を行うというものである。その手段として、「露天風呂」の整備や「樹を植える」「看板を取り去る」ことによる環境整備がある。一般論的にいうと、「癒しの里」というコンセプトを打ち立て、それにあわせた露天風呂等の大道具・小道具を配したうえ、「入湯手形」などの「ソフト」を活用するということになる。

・新たな課題
現在地には拡張が困難な施設が多いことから、さらに川を上った東の地区等へ新たな施設を開設する等の事例がみられる。
現在では、「手形」による日帰り客で休日を中心に混雑し、本来のお客である泊まり客がゆっくり入れない等の問題も生じている。このため、立ち寄り型の旅行会社のツアー客には「手形」を販売しないという方針を打ち出すに至っている。




最後にここで私の意見を少し書かせていただきます。


黒川温泉成功例にはいくつかの成功のヒントが隠されていました。


1.温泉地全体の活況を考える。
最近どこの温泉地を訪ねても宿泊する宿にチェックインすると、帰る時まで宿の外へ出ないという方も多くおられるかと思います。
これは建前としてはお客様の利便性を考慮し、お土産品や飲食店、遊戯施設を館内に完備する傾向にあります。しかしこれは宿側での収益増強が主たる目的ではないかと思われます。
このため、温泉街を形成する周辺商店やお土産品店、飲食店等が寂れ、温泉街全体としての活況が感じられなくなりました。宿単体の収益を追求するあまり温泉地全体の活況が薄れ、強いては集客力にも期待が持てません。
また日帰りのお客様を重視しない温泉地も存在します。日帰り客用の駐車場整備や確保に乏しい所もあります。それら温泉地は、宿の予約が旅行代理店を通じた団体客が主体となっているからに他なりません。
黒川温泉の多くは個人のリピーター客なのです。
湯めぐり手形的なものは北海道の温泉地でも最近多くみられるようになりましたが、その有効期間や利用時間帯、利用料金、利用条件によってはお客様満足度に大きな差異が生じます。
提供されるサービスはお客様がそこを訪ねる際、楽しみにされる魅力ある物でなくてはなりません。お客様は実際にそのサービスに触れると、そのサービスが心のこもったものか否かはすぐに判断がつくものです。俄サービスはかえってマイナスイメージとなる場合があります。
宿側がいくら館内施設を充実させてもそれは一軒の宿内の出来事です。温泉地全体を活性化する手立てを考えなくてはいずれ飽きられてしまいます。一度そこを訪ねたお客様が、その温泉地にある全ての宿に泊まってみたい、温泉地全体を歩いてみたいと思わせる魅力を感じさせなくてはなりません。



2.成功例に教えを乞う
成功したものにはそれなりの努力やプロセスがあります。
先人の教えを素直に乞う姿勢を私は大切にしたいと思います。
黒川温泉においても「新明館」成功の秘訣を「いこい旅館」の婿養子さんが教えを乞いていなければもしかすると今日の繁栄はなかったかもしれません。ここに互いの信頼感と連帯感が湧いてきたものだと推察します。
とかく老舗旅館では歴史を重んずるばかりに、素直な教えを乞う事ができない経営者もいるかと思います。
先日当ブログでも書いた、星野リゾートの星野社長も長野の老舗旅館後継者で、その葛藤を乗り越え今日の成功を導きだされています。
「井の中の蛙」とならぬよう、全国行脚し先人の成功例を肌で感じる事が肝要です。



3.情報共有のあり方
同じ温泉地で宿を営んでいると言っても、商売上ではライバルということになります。
しかし、ある意味どの程度その枠を越え情報共有できるかが温泉地全体の活性化に大きく影響するものと私は考えます。
皆さん、黒川温泉のホームページをご覧になられましたか?
TOPページに空室状況があります。
一軒宿やチェーンホテルならともかく、経営者を異にする宿の予約状況が一箇所で確認できます。
宿泊予約する者にとっては大変便利なサービスであり情報です。
でもこれってなかなかできそうでできないサービスです。
情報提供している宿相互の信頼関係がなければ絶対に実施する事はできません。
逆にいうと黒川温泉はそれだけ温泉地全体の連帯感が絶大だという事です。
私の勝手な推察ですが、もし予約の少ない宿があれば、温泉地全体で連携し助け合っているものと想像できます。
こうなるとどこの宿が良いとか悪いとかでなく、黒川温泉全体が光って見えます。
通常どんなに人気のある温泉地でも、個々の宿についてはお客様評価に必ず良い宿と悪い宿が存在します。
黒川温泉にはそれが無く、経営側にサービスや接客に対する自信と誇りをさえ感じます。
一度訪れたお客様はそれを肌で感じ、次回訪問時は違う宿の趣やサービスに触れたくなりそれがリピーターとなっていきます。



今回アンケートの対象となった温泉は前述したようにじゃらんnetを通じて予約した宿やツアーに含まれていた全国323箇所の温泉です。

そのうち北海道19箇所の温泉地が対象です。

対象となった温泉は下記資料を参考にして下さい。

●じゃらん人気温泉地ランキング2008
http://www.recruit.jp/library/travel/T20071221/docfile.pdf


残念ながら温泉ファンの方が高く評価をされている秘湯一軒宿等、アンケート対象外になっている温泉宿も多く存在します。

その点を考慮しこのランキングを見る必要があります。



私は九州では数ヶ所の温泉しか訪ねていませんが、黒川温泉がこのランキング第1位になった事に関しては疑念の余地がありません。



今回の調査で第3位にランキングされている東北、秋田県乳頭温泉郷・田沢湖温泉も我が家で訪ねたことのある温泉です。


鶴の湯本陣鶴の湯露天

↑【乳頭温泉郷 鶴の湯】

1993年5月、乳頭温泉郷鶴の湯」に訪問していますが、ここを選んだ理由を思い起こしてみました。

山間の一軒宿で、乳白色の大きな露天風呂を有する温泉は北海道にも存在します。
しかし、その景色や趣、露天風呂の種類、山の芋鍋等、北海道では感じられない何かを感じたのでした。


鶴の湯から直線距離で約1.5kmの場所に妙の湯があります。



妙の湯玄関
↑【乳頭温泉郷 妙の湯】



妙の湯露天風呂
↑【乳頭温泉郷 妙の湯】



小さな宿ですがここも個性を感ずる宿でした。






乳頭温泉郷には鶴の湯を含め7つの宿があり、全て趣が異なる魅力一杯の一軒宿です。
ここは秘湯ファンを心底満足させてくれる温泉郷です。


実際訪問して自分のその思いが間違いでなかった事を実感しました。
そしてまた訪ねてみたいと思わせるサービスや対応を感じたのです。

残念ながら北海道でそのような気持ちを感じさせてくれた温泉はそれほど多くありません。
(逆にもう2度と行きたくないと思う温泉宿はありますが・・・)




そして全国12位にランクされている鹿児島県霧島温泉にある宿のうちの一軒である「忘れの里雅叙園」も人を引きつけてやまない私のお気に入り宿の一箇所です。

●忘れの里 雅叙園ホームページ
http://gajoen.jp/main.html



いずれにしても今回ランキングに入った温泉はお客様の満足度が高かったことに間違いはありません。

北海道の温泉も地域一丸となり、先人の成功例を学び、温泉地全体の活性化に努力してほしいと願っています。




ランキング詳細と解説については北海道じゃらん2月号をお買い求めの上是非お読み下さい。








それでは。