地域の「宝」について考える

地域活性化の話しをする際、地域の「宝」を探すワークショップが良く開催されます。
地域の「宝」とは、地域に住む人がその土地で自慢できる歴史的遺産や絶景ポイントそして食や体験そして産業など多岐にわたるかと思います。
例えばそれを「観光」という観点に絞り、多くの方に自分の町の魅力を知っていただき訪問していただく動機付けとなる「宝」とは実際何があるでしょうか?

もちろん前述したワークショップの中から貴重な意見が多く出されることと思いますが、果たしてそれは地域にとって本当の「宝」と言って良いのでしょうか?

地域の文化や歴史的資産を後世に残しそれを記録、保存そして展示することはとても重要です。

しかし、それは外部の方から見てその地域を訪れてみようと思っていただける動機付け、さらには観光資源と捉えていただけるかは別問題ではと考えています。


広辞苑によると

「旅とは定まった地を離れて、ひととき他の土地(場所)へゆくこと」

そして大辞泉では

「住んでいる所を離れて、よその土地を訪れること」


とあります。


旅とは違う土地を訪れ「非日常」を体験することも意味しています。




2008年、中国で公開された映画「非誠勿擾」は北海道ロケが中心で空前の大ヒットとなりました。
※2010年には邦題「狙った恋の落とし方」として日本国内でも公開されました。

http://www.okhotsk.org/news/tyuugoku3.html


北海道ロケは道東を中心に行われており、中国の方に北海道ブームを起こすこととなりました。


公開当時ほどの勢いはありませんが、今も中国人観光客人気スポットとして多くの方がロケ地を訪れています。


これは「ロケ地巡礼」と言われる周遊観光の一つのスタイルです。



この映画ロケ地の一つに網走市にある「能取岬」があります。
http://abashiri.jp/tabinavi/02spot/notoromisaki.html






※写真は2010年5月下旬訪問時のものです。

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灯台風景も素敵ですが、灯台に向かう道も北海道らしさを感じさせてくれます。

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映画公開から9年、最近この「能取岬」に熱い視線が注がれています。


それはJALのCMロケ地として使われているからです。



https://www.youtube.com/watch?time_continue=9&v=GSnKmC-kXVk

しかもあの人気グループ「嵐」が登場するとなれば、女性ファンの新しい聖地になること間違いありません。


しかし私はとても危惧している事があります。

このCMで能取岬が注目を浴びる事は結構なことですが、これは能取岬の魅力というよりは「嵐」に対する人気に依存している事に他なりません。

嵐ファンの方には大変申し訳ありませんが、かつて北海道美瑛町ロケでJALのCMとして放映された通称「五本の木」は今は大変残念な結果に終わっています。


私個人としては北海道の駅に芸能人が登場するCMとして一番記憶に残っているは宗谷本線「比布駅」です。




比布町では役場職員によるリメイク版を制作しています。




さらに比布町では町の予算で駅舎を建て替え、駅舎内にカフェも誕生し多くの方で賑わっています。



これって、自分の町の駅を最大限観光活用したいという行政の熱い思いが伝わってきます。

とても素敵な事です。






さて、能取岬の話しはこれぐらいにして「非誠勿擾(邦題:狙った恋の落とし方)」では鉄道の駅もロケ地として登場します。


映画の中で北海道最初のロケ地として登場するのがJR北海道釧網本線「北浜駅」です。




※写真は2010年5月下旬訪問時のものです。

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多くの方の名刺で待合室壁が埋め尽くされていました。

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ここはオホーツク海に近くホームからの眺めも素敵です。

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そして駅横に設置されている展望台からの眺めはさらに絶景です。

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こうして見ると「鉄道」の駅や路線は大変貴重な観光資源であることがわかります。


地域の「宝」とは特に際立った名所である必要はなく、地域の方が日常生活を過ごす自然な場所が来訪者に非日常を感じていただけるのだと思います。



今月末から、道庁主催の北海道観光列車モニターツアーが始まります。
http://www.pref.hokkaido.lg.jp/ss/stk/kanko_train_tours.htm


このツアーでは北海道の観光スポットにも立ち寄りますが、何よりも地域の方々と触れ合える時間を設けている点に興味をそそられます。

このモニターツアーでも動画記録されるものと思います。

今後、北海道での鉄道旅を推進するためにも、モニターツアーを通した参加者模様を国内外へ情報発信いただき、多くの方に北海道を訪ねていただけるキッカケになったらと願わずにはいられません。


広大な北海道だからこそ、鉄道+バス、さらにはLCCを組み合わせた「周遊プラン」が数多く構築できたら素晴らしいことです。





あとがき



北海道のとある地方に行くと

「うちの町には何もないですから・・・」

との声が時々聞かれます。


しかし、こちらの鉄道会社のキャッチコピーは

『ここには何もないがあります』


その鉄道会社とは「いすみ鉄道」です。
http://www.isumirail.co.jp/


いすみ鉄道鳥塚社長の敏腕についてはこちらをご参照願います。

http://www.news24.jp/articles/2017/05/04/06360633.html
http://www.news24.jp/articles/2017/05/04/06360634.html
http://www.news24.jp/articles/2017/05/04/06360635.html
http://www.news24.jp/articles/2017/05/04/06360636.html
http://www.news24.jp/articles/2017/05/04/06360637.html



昨年から今年にかけ、鳥塚社長には鉄道を中心とした地域を元気にする方法のアドバイスをいただいています。

アドバイスの中で私が一番感じたのは、地域の方と一体になり、小さな事でも良いのでみんなで町づくりに参加する環境を作るという点です。

鳥塚社長は『ここには何もないがあります』 に加え

「いすみ鉄道は乗らなくてもよい鉄道です」

とも言われています。

その真意はどこにあるのでしょうか?

下記、いすみ鉄道社長ブログをお読みいただくと納得いただけると思います。

http://isumi.rail.shop-pro.jp/?eid=680
http://isumi.rail.shop-pro.jp/?eid=681&PHPSESSID=m1e04bt1enq4vvjomkban66086
http://isumi.rail.shop-pro.jp/?eid=682


地域の「宝」探しの多くが、すでに観光スポット化されたものをピックアップしている感が否めません。

特に地方に於いては磨かれる事により「宝」となる「原石」探しをするのが肝要ではと感じています。

「原石」の磨き方を間違えるとそれは「宝」としての輝きを発することはありません。


「原石」「宝」にするには、それなりの知恵と経験そして能力(手腕)を有している事が不可欠です。


いすみ鉄道本社がある「大多喜駅」・・・


きな、くの、び、がある駅と読めます。

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私個人としてはJR北海道が元気になり現状の路線が維持されることを信じて止みません。

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